Monday, March 19, 2007

通り過ぎていった子犬

たった2ヶ月の、鶏くらいの大きさの小さな小さな子犬。
譲ってくれた飼い主さんの話だと、前日まで母犬と一緒に寝ていたとか。
急にひとりぼっちにさせられて、初めて乗った車で酔って、段ボール箱の中に置き去りにされて、最初はかわいそうなくらい震えてしょげた顔をしていた。落ち 着いて一眠りしたのを確かめてから、庭に連れ出してオシッコさせてみる。ちゃーんとできる。ご飯を与えてみるとしっかり食べる。もう大丈夫ね。

庭に出て一緒に歩くと、ちょこちょこと後をついてくる。私が立ち止まれば彼女も立ち止まる。小さな目で見上げてくる。私がしゃがむと股の間にもぐりこんで くる。しばらくすると少しずつ私から離れて遊びだす。ちょっと離れすぎたかな?と思うとあわてて帰ってくる。また冒険に行く。今度は私が音を出してみる。 うれしそうに帰ってくる。ああ、正しい子犬だ(笑)。

お腹がすくと私の足の甲の上に立って(笑)しがみついてくる。オシッコに行きたくなると庭に面した窓にまっすぐ走っていってウロウロする。お願いだから寝 てて、とダンボールに入れてもいつのまにかスリッパの上で寝てる。小さなぬいぐるみと一緒に箱入り娘にしたらカミカミしながら寝てしまった。今度は起きな い。。。

たった数時間で私を信頼してくれるのね、ありがとう。

翌日、犬たちがお互いに気にするので、りん姉以外の犬と対面させてみた。(余談だが、我が家ではハーディング本能が一番弱く、人には一番フレンドリー(に 見える)で、一番いいお顔ができて穏やかそうに見えるりん姉が、実は一番信用が置けない。)やはり、みんな初めのうちは新入りの匂いをかぎたがった。サン は腰を低くしてそお~~っと。ジェスは通りすがりにちょっと。グレッグは真正面から尻尾を上げて。これにはちびちゃんもさすがに、ぅぅーーっぁん!!と精 一杯吠えてササッと私の足の間に隠れた。グレッグは少々しつこかったけど、だいたいこれで儀式は終わり。別に関係ないや、なーんてみんなウソブキながら普 通の自由時間を過ごしていた。

用を足してやりたいことが終わると、サンはわざわざちびちゃんの前にやってきて、お尻を向けて寝そべる。私の足元から3頭を観察していたおちびさん。今度 はそっとサンに近づいて匂いをかぐ。じっとしててくれるサン兄ちゃん。そっと振り返ってもう一度ちびさんの匂いをかいで、立ち上がる。兄ちゃんについて歩 く。グレッグが勢いよく近づいてきて驚いたちびちゃんは、あわてて私の足元に逆戻り。すると、サン兄ちゃんはまたお尻を向けて寝転がるところから始めてく れる。何度か繰り返したら、グレッグもゆっくり近づくようになったし、兄ちゃんはだんだん飽きてきたよう。そのころにはちょっとだけずーずーしくなる子 犬。もう、みんなと一緒に普通に庭を歩けるようになってきた。そして、ジェス姉ちゃんの首にぶら下がろうとして怒られ、サン兄ちゃんの長い足の下を歩いて 蹴飛ばされ、グレッグ兄ちゃんにお尻の匂いをかがれながら突かれてつんのめり・・・ほんの10分ほどの間の出来事でした。

夕方、近所の農家のおじさんにもらわれていったおちびちゃん。元気でね。
そして、ちびがいなくなったことを知っているはずの犬たち、何事もなかったように普通に過ごしている。ありがとうね。

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数日後、おじさんの家でちびちゃんに会いました。
「ラッキー」という名前をもらって、とても元気にしていました。が、私を見るなり、私の足元に隠れてしまいました。うれしいような、困ったような。。。これからは飼い主間違えちゃだめだよ・・・(笑)。

Saturday, February 18, 2006

クロちゃん

みわファームは村のはずれに位置するんですが,何かと理由をつけて訪ねてくださるご近所の方が絶えません.
世間話をしたり,くず野菜を持ってきて下さったりと用事は様々ですが,視線は一様に牧場と家畜たちの方に向けられています.今は家畜を養う家が少なくなったとはいえ,やっぱり,動物好きの人は多いんですね.

その中で一人,ファームの入口の手前まで散歩に来て,特に挨拶するでもなく元来た道を引き返していくおっちゃんがいます.
連れはいつも黒い犬.
本名かどうか知りませんが,村の人からは 「クロちゃん」 と呼ばれてます.
日本犬にシェパードの血でも入っているのでしょう,身体が大きくて堂々としています.

おっちゃんは,仕事場の畑まで軽トラで通っています.
クロちゃんはいつも助手席を独占して通勤のお供です.
おっちゃんが畑仕事している間,クロちゃんはそのまま車に残ってお留守番をしています.
そして夕方になって仕事が終わると,おっちゃんと一緒に付近をのんびりと散歩します.
気が向いたときは,少し離れたみわファームまで足を延ばすというわけです.

クロちゃんはいつも落ち着いています.
子供たちが車を覗き込んでも平気だし,窓から手が入ってきて身体を撫でられてもじっとしています.
浅はかな(うちの)若犬が吠えかかっても知らん顔です.
おっちゃんは口にこそしませんが,そんなクロちゃんを自慢に思ってるようです.
「良い子ですね〜」 なんて言うと,ほんのちょっぴり目尻が下がってます.
無口なところがそっくりな二人です.

そうやって,朝から晩までずっと一緒のおっちゃんとクロちゃん.
実は車の中で一杯お喋りしてるんじゃないかと,密かに睨んでいます.

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実は、このクロちゃん、おっちゃんの犬ではないのだそうです。
前の飼い主さんがほとんどかまってやれないので、おっちゃんに預けているのだとか。
最初は、誰にも身体を触らせてなんかくれなかったそうです。大きくて黒いから本当に怖い犬だと言われていたそうです。犬も出会う人によってこれだけ変われるんですね。

そうそう、一度だけ軽トラに乗るときに、思いっきりシッポをドアに挟まれたんだそうです。身体中のどこを触っても怒らないクロちゃんですが、シッポだけはダメなんだそうです。

接客係のトランプ

ミレニアムの年にイギリスのファームを訪問したとき,土地勘の無い私たちは宿もファームの主人に紹介してもらいました.
といっても観光名所でもないひなびた田舎のことですから,近くの宿と言えばそこしかなかったかもしれません.
住宅街の中にある小奇麗で暖かい感じのホテルでした.

そのホテルには一頭の犬が飼われていました.
さすが本場,それがもう何気なくボーダーコリーでした.

名前はトランプ.
ディズニーの "Lady and the Tramp" からとったんだそうです.
黒っぽいラフコートに堂々とした骨格.
すでに10歳を越えていたでしょう,大きな身体の端々から老いがにじみ出ていました.

いろいろと出会いのあった旅でしたが,最初に友達になってくれたのは彼でした.
初対面の挨拶の後,ゆっくり横になってお腹を撫でさせてくれました.
3日目には一緒に芝生の庭に出て木切れで遊んだりもしたっけ.
農場に行ったり観光したりで忙しかった私たちですが,宿に戻ってから彼に会うのが楽しみでした.
廊下や階段の下で大きな影のように佇んでいる彼を見かけると,なぜかホッとするのでした.

ただ,いつも会えるとは限りません.
彼は建物の内外を自由にうろつく特権を得ていたようで,宿の人に居場所を尋ねても 「さあ,2階にでもいるんじゃない?」 といった調子.
そんなときは少しガッカリして部屋に戻りました.

ある時,何気なくホテルのパンフレットを眺めていると,スタッフリストの最後にちゃんと "Tramp" という名前が載ってるのを見つけました.
しかも仕事の欄には 「ゲストと散歩すること」 とあります .
なんと彼は見知らぬゲストと外出するだけでなく,付近の道案内までしているのでした.
う〜ん迂闊,知らぬとはいえそんな方に相手していただいてたとは・・・

あれからもう5年が経ちました.
その間に私たちの生活は大きく変わり,そして今,目の前に水揚げされたカツオみたくビチビチ跳ねる若犬がいます.
それを眺めていて,なぜか彼のことを思い出しました.

3年前にそのホテルを訪問した友人によると,彼はまだ元気にしていたそうです.
もしかしたら今でも,ホテルの中をぶらつきながらゲストの相手をしてるかもしれません.
本当に,そうだったら良いのに・・・

ファームで暮らすナン

彼女の飼い主がこの農場を訪れたのは2年ほど前。
私に何かあったらこの犬を頼みます、と依頼に来てほどなく、飼い主は 彼女を残して逝ってしまったそうだ。

最初に連れてこられたときから、彼女はどこか臆病でおどおどしていて、 それが裏返って近づく犬や人に威嚇するような犬だった。
今でも急な動きで近づく犬に唸ってみせたり、大きな物音に ビクッと身体をすくめたりする。

前の飼い主が虐待したわけでも、叩いて叱ったわけでもないのに。
どこかで、ボタンのかけ違いがあったのだろう。
彼女は結局スポイルされて育ったのね、と農場主は言う。

そんな彼女に最初は近づくな、と言われた。
ナンがどういう行動に出るかわからなくてキケンだから・・・ という意味ではない。
"私が" どういう人間かまだよくわかっていなかったからだ。
彼女にとって良くない行動に出るかもしれないからだ。

言われたとおり、私はバックヤードで知らん顔して座っていた。
不審者であり侵入者でもある私をじっと伺っていた彼女は、何を思ったのか自分から近 寄ってきた。
そうだよね,本当はみんなと同じように、「あんた誰?」 「どっから来たの?」 って 聞きに来たかったんだよね。

急な動きをするとやっぱりビクッとするんだけど、3日目にやっと友達になれた。
頭をなでても、ブラシをかけても、気持ちよさそうな顔を見せてくれたね。

もちろん羊追いはできるけれど、ハンドラーが迷うとすぐに羊に歯を当ててしまうナン。
少し状況が変わるとすぐに心を閉ざしてしまうナン。
今度会うときまで私を覚えていてくれるだろうか。

ファームで暮らすロブ

彼はレスキュー犬だ。
トライカラーの大柄な犬。
レスキューされた当初は、欲しいものは牙を使ってでも取っていた犬。
なのに今はとても穏やか。
小さな子供の手からボールを取るときは、そーっと顔を斜めに傾けてゆっくりくわえる。

さぞや厳しい訓練と躾を・・・
いえいえ、そんなことはないんですって。
彼が興奮したり、困ったりする場面をできるだけ作らないようにして、 そして彼らしさを認めてやっただけ。

彼らしさって・・・
彼のそばにいると、次から次へと石ころやら木切れを拾ってきては 私のひざに積み上げていく。
誰も相手をしてくれないと、自分の身体くらいあるバケツをくわえて バックヤードを歩いている。
たまーにヤードを抜け出して羊追いの自主トレをやり、帰ってきなさいと 言われれば、本当にうれしそうに帰ってくる。

能天気? そうなのかもしれない。
百戦錬磨の農場主をして、彼はよくわからない・・・と言わしめる。
肩をすくめながら、そんなことを言うときの飼い主の顔は、なんだかうれしそうでもある。

犬を襲うB君

私の友達に犬を襲うのが大好きなボーダーコリーのB君を飼っている人がいる。

その人は犬と一緒に遊ぶのが大好きで、
犬が好きで好きでしょうがなくって、
そして何頭目かにボーダーコリーを迎えた。
B君は人間に対しては普通にいい子なんだけど、
いつのまにか、犬と見れば性別関係なく乗らずにはいられない、
襲わずにはいられない子になっちゃったんだ。
とおーくで、粒にしか見えない犬が車に乗るのを見て、
うわーっ!と走ってって車に飛びついて脅すような奴だった。(笑)

友達は、その子を何とかしてあげたくて、
それこそ何軒も何軒も訓練所を尋ね一生懸命だったんだって。
でも、行くとこ行くとこ 「この犬はどうにもなりません」 と言われ、
犬が大好きで色々なところに行きたいのに
いろんなとこから 「来ないで下さい」 と言われ、
毎日絶望して泣いていたんだって。

私が初めて彼女と彼女のB君を見たのは、犬連れが集まったある会場。
襲う、乗る、対象の犬を探してはぁはぁリードを引っ張りまくるという、
とても近づきたくない、という雰囲気を漂わせていた。

その数ヵ月後、ふとしたきっかけで彼女と友達になり、
そーだな、もう6年か7年くらいの付き合いなんだけど、
それからB君はどうなったと思う?

昔のB君を知っている人には信じられないような犬になってる。
もう、他の犬と一緒に遊ぶことだって出来るし、
ドッグスポーツの大会にも出場してすごい成績を上げてる。
TVにも出て、ダンスまでしたよ。
ものすごく暑いスタジオで大音響の音楽が響き渡る中、 踊り狂う人々の真ん中でね。

昔のB君を今のB君に変えたのは誰だと思う?
それは訓練士でなく訓練所でもなく、彼女自身だったんだ。
そうなるまで数え切れないドッグファイトを繰り返し、
泣きながら私やみんなに謝ったことも数知れないけど、
彼女は決して諦めなかった。
何度も何度も、B君に暴力を使うのはいけないといい続けたよ。

そして今、彼女はたくさんの犬たちに囲まれて暮らしてる。
犬は犬に自由を侵されることなく伸び伸びと暮らしてるよ。
彼女も犬達も、とっても幸せそうに見える。

−−−

よく、簡単に自分の犬や人の犬をシャイだと言う人がいるけれど、
本当にシャイな犬なんか滅多にいないんだよね。
本当にシャイな犬は人が触ることなんて出来ないんだよ。
同じことで、自分の犬や人の犬が攻撃的という人もよくいるけれど、
本当に攻撃的な犬だったら、そんなに平然と人に喋れないって。
最初から喉や腹狙ってくるからね。

だから、うちのはこうだからと一言で終わらすのではなくて、
本能だから群れだからと終わらせるのではなくて、
犬が何思ってどう動くのかを考えてほしいな・・・誰もがね。

犬って本能だけでないんだよ。
感情もあるし、その芯もあるんだよ。
芯が動けば犬は変わる。
決めつけちゃったら、そこで終わりだもんね。

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とあるMLで投稿されていた記事を,ご本人承諾の上,編集/転載させていただきました.

天下のアキ坊

 秋田犬に似てるから 「アキ坊」 ,勝手にそう名付けました.

 山小屋から高原に向かう道路に面して,一軒の広い庭の家があって,その庭の一番道路際に,いつも鎖で繋がれっ放しになってます.

 ちょっと小さ目の 「これぞニッポン!」 という風情の犬小屋の前で,日がな一日座ったり寝転んだりしています.カンカン照りの暑い日も,雪が積もった寒い朝も,周りが明るいうちは小屋に入らず,ずっとその前に陣取っています.

 私たちは,その子がとても気になる...ってほどでもないんですが,これというものも無い田舎道なので,車を運転しながらよく眺めていました.あるときは完全に無視されたり,ときには胡散臭げな目で睨み返されたり,車のウィンド越しのつき合いが,いつのまにかもう3年になりました.

 ここまで読んで,アキ坊がしょぼくれた犬だと想像した人,ブッブ〜です.彼は思いのほか(ごめんなさい)カッコイイんですよ.
 顔ががっしりしてて,きれいな巻き尾.こちらを睨む目には力があるし,立ち居振舞いも堂々としてる.いつ運動してるのか知らないけど,身体にも張りがあって立派です.

 そういえば一度だけ,家族の人(多分お父さん)が外出から帰宅して,通りすがりにアキ坊の肩をポンポンと叩くのを見かけたことがあります.そのときの彼の嬉しそうな様子ったら...普段の威厳はどこへやら,という感じでした.

 それを見て,勝手に想像しました.
 群が大好きで,その群から愛され,そして自分が群の役に立っているという実感...そんな気持ちの充実が,アキ坊をカッコ良く見せてるんじゃないだろーか?って.
 車の中の私たちに向かって, 「オレはここの家族の一員だ.ここで見張ってるのがオレの仕事だい!」 とでも言って,胸を反らしてるのかもしれない.

 もちろん,繋がれっぱなしでしょぼくれて見える犬も山ほどいますし,例えばボーダーコリーが彼と同じような生活に満足できるとも思えない.

 でも結局は,本当に大事なのは 「飼い方(のカタチ)」 ではなく,もっと別のところにあるんだろうな.そんなことを感じさせてくれるアキ坊でした.

ハスキー・ハスキー

 ちょっとした経緯があって,草津温泉の近くの うどん屋さん(兼宿泊所)に泊めていただきました. オーナーさんが犬ゾリのファンシャーで,店の裏で10頭あまりの シベリアンを飼っていらっしゃる.

 その犬たちが良かったんですよ.

 ハスというと,「人間? 俺は興味ないね」 みたいな先入観があったんだけど, その子たちは穏やかに,そしてとてもうれしそうに,初対面の私たちを迎えてくれました. 他人が好きじゃなさそうな子は,さりげなく横を向いて 「来ないでね」 って言ってましたけどね.

 「ハスキーは扱いにくいって聞いてましたけど...」 と恐る恐る聞くと, キップの良い女将さん(旦那は顔の大きい下ネタ好き)が,きっぱりと言い切りました.  「良い犬は飼いやすいんだよ!」

 普段から,純血種,特にワーキングドッグに対して 「飼いやすい? 飼いにくい?」 と いう議論がナンセンスだと思ってましたが,その時の 「飼いやすい」 には 万感の想いと覚悟がこもってるようで,胸に迫るものがありました.

 やっぱ,人なんだよな〜.

ボーダーB君と雑種Y君

野良上がりY君

犬には社会ルールがわからんか? と言われれば,そーでもないんですよ.

人間的な感じでは判断してないのですが,自分なりに判断してあやしい音や人にだけ吼える...雑種Y君,そんな犬です.
普段はほとんど吼えないのですが,夜中にゴミを竹やぶに捨ててた人には吼えた.
どんな基準かはわからないですが,あやしい動きをしている人だけに吼えます.駐車中の車をがちゃがちゃしつこくやってる人とか...

なぜそんなかというと,たぶんヤツが野良犬あがりだからです.
道路も必ず歩道を通るヤツでした.
大きな信号は,人と一緒に渡ってたらしい.(近所のおばちゃん談)

野良の場合,自分自身で状況を判断していくので,しぶとく生き永らえてる場合,かなり社会ルールを覚えるのです.ラーメン屋は裏口から入る・・・とか.覚えない犬は生きていけないので...
ただ一つ問題は,人の言うことを聞きません.完全に独立していて,自分の判断だけを信用してるのです.人間の動向はしっかり観察してますが.

家に引き取った頃,必死こいて話しかけ,最近ではだいぶ話を聞いてくれるようになったのですが,そこでハタと気づきました.

 「こいつ・・バ・・バカになっていく...」

家に来た当初,言うことは全くききませんでしたが,危ないこともしませんでした.ボールも追わなきゃ車も追わん.無駄一切なし.
食べることに必死だったんだから当たり前か.でも最近,言うことを聞くようになり,だいぶ遊びということを理解しつつあり,喜怒哀楽が出てきて...
そのかわり,危険回避能力減退! あきらかに.
こちらを信用し,生活に安心感が出てきたせい?

でも・・・でもさー,独立しながらもこっちの話をきいてくれるような,そんな夢のような犬になってくれまいか.
服従なんかしなくていいからさー,カヌー犬ガクのように(うっとり).
たまに竹やぶなどで,札束など拾ってくれたらなお良し.

言う事を聞いてくれるようになるにしたがって,独立・自立心が無くなっていく.かっちょいい犬から,かわいい犬へ...(顔はこわいけど)

Yよ! 宝くじ当てて,いつか山買ってやるからな〜.
それまで生きててくれい!


泳ぐB君

うちの場合は水が好き,という感じではなくて,あきらかにボーダーB君,雑種Y君を意識してます. 子供プールに出たり入ったり,入ったり出たり...
その間,目はY君ばかり見ています.

「へっ,おまえ水に入れねえのか.かっこわりいな.オレ? このとーりよ.ほりゃおりゃあ.ごふっ!」

えぇ,水は真っ黒ですとも! B君,コロモついてますとも! (←あと大変)

川に入るように 「ゴーゴー,Yよ! それぇ」 とか言いながら促してる時,すぅーーーっと目の前を泳ぎとおるB君.それも,Y君お気に入りのヒヨコちゃんをくわえて.
もちろん目はY君を見ています.「へっ,ヒヨコはオレがもらってくぜ! 悔しかったら来てみな!」ってな感じでしょうか.
なぜ,こんなに性格がヒネてるんでしょうか.やはり飼い主に...


叱るB君


雑種Y君に怒ると,ボーダーB君,Yを叱りに行きます.
そうですねー,不良がガンつけるっていうんでしょうか, まさにあんな感じで,下からY君をねめつけて,にじり寄ります.
得意気です.やる気満々です. 「あーん・・おまえわかってんのかぁ?」 です.
Y君,先生に怒られたように深くコウベを垂れてます.
「すいませんし,すいませんしぃ.勘弁してくらさい...うぅ」 です.


ボーダーB君を叱ると...やはりB君,Y君を叱りに行きます・・・えっ?・・・
「こら,Yでなく,アンタだよ,B!」などといっても無視します.
「おんどりゃあ! なめてんのかい! こっちこいやぁ!」 などと怒鳴るとこっちに来ますが, 目はY君を見つめ,怒り光線を発射.
多分,気持ち的には 「おまえのせいで,おまえのせいで,おまえのせいでえぇぇぇ」 なんでしょう.(←もちろん,Yは全くの無実)
もちろん,それからB君は怒られますが,その時,Y君は見ないフリをしてくれています.

 Y・・良いやつよのぅ.
 B・・嫌なことは人のせい.うれしい事は自分のおかげ.

Bよ! それでいいのか?

いいんだろーな,たぶん...

ニーヴ

 夕刻、お世話になった友人宅の庭を散歩していると、塀越しにトライの大柄な子の姿が見えたので、カメラを持ってお隣さんの表玄関に走って行きました。
 門の外からカメラを構えると、スクっと立ち上がり
 「ウー、ワンワンワン!」
 背中の毛を逆立つつ飛びかかるそぶりを見せながらも、徐々に家の方へ後退していきます。
 「あ〜ゴメン! びっくりさせちゃったね」

 撮影をあきらめ退散しようとしたとき、納屋から出てきたティーネイジャーの男の子が厳しい口調で一声.
 "ニーヴ stop it! Come here, lay down"
 ニーヴはほっとした様子で男の子の足元に伏せましたが、後ろから警戒心に満ちた視線を送ってきます。

 「○○の友達だね?」
 「うん。すてきな犬ね、あなたの?」
 「そうだよ。もうすぐ3歳で、、、」
 話はとんとん拍子にまとまり、裏の牧草地でニーヴの仕事を見せてくれることになりました。途中にかなりぬかるんだ個所があり、ためらっていると、その子がひょいっと肩を貸してくれたので、足首まで埋まることなく渡ることができました。

 期待半分、でもまだ納得いかないよ、、、という様子でついてきたニーヴは、それでも、少年の2〜3m後ろを歩く私を追い抜かないように、歩調を緩めたり、くるっとUターンをしながら気をつけて歩いていました。闖入者でもいっぱしの人間として顔を立ててくれているのでしょうか。

 牧草地には数頭の牛と50匹の羊が入り混じり、のんびりと草をはんでいました。 "Bring'em" の号令とともに石塀沿いに走っていくニーヴの姿を見止めると羊たちが集まってきます。牛は、、、そのまま動かずに食べつづけています。

 頃合を見計らって「シュテッ(たぶんsteady)」の号令がかかると、ニーヴは納得がいかない様子で、うろうろしたかと思うと、ばたっと草地に寝転がりごろごろとエビ踊りを始めたのです。厳しい口調で号令が繰り返されると、立ち上がり仕事を再開。

 この一連の不可解な動きの答えは、おそらく、「シュテッ」のかかった位置より向こうの草地からひょっこりと姿を見せた2匹の羊にあったのではないかと思います。

 逆光越しに、その羊たちに向かってクラウチング体勢をとるニーヴの姿は、なんだか闘牛士に向かう牛のように雄々しく見えました。

スカイ

 スカイに会ったのは、彼女が7歳の秋。

 一目見て、訪問先の主人から全幅の信頼を受けていることがわかった。私たちを客として受け入れてくれたけれど、全く媚びてこない、凛とした犬だった。(容姿はかわいらしい、白黒はっきりした長毛の小柄な子。)

 70頭ほどの羊をいとも簡単にドライビングして別の場所へ移動させ、ご主人が茶色い羊2頭を群から離したいと言えば、細かな指示も無いのに、自分から群の中に割って入り,その羊たちを追い込んでいた。

 その農場にはたくさんのボーダーコリーたちがいて、それぞれが牧羊トレーニングを行ったり、我々のような客に牧羊体験をさせてくれたりするのだが、スカイだけはどの犬が練習していようとも、自分のご主人が客と立ち話していようとも、ずっとその辺にいた。

 レスキューされた犬たちも見えるところにつながれていた。たぶん、体罰を受け虐待されてきたのだろう。心を開くどころか,震えながら見知らぬ人間を恐れていた。ご主人は、その犬にも我々を紹介してくれたが、そのときスカイは何を考えたのか、我々の周りに姿を現そうとはしなかった。
 人間は何一つ指示を出していない。
 彼女は自分自身の判断で行動したに違いない。

 ご主人が私たちを殺風景な丘へ案内してくれたとき、「一緒においで」と言われた彼女は、車にひょいっと飛び乗ったかと思うと、当然のようについてきてくれた。

 今年、彼女ははじめてお母さんになるかもしれない。
 彼女と仕事をすることがとてもいい感じになってきたから、この子のラインを残したいと思う、とご主人が言っていたから。

3頭の子犬

 その日は昼からずーっとそこの犬舎に居座り、暗くなるまで火にあたり、飲みながらしゃべっていました。

 その友達は50才くらいの鳶の親方。女性と子供、犬にはひどく優しい人です。

 そこの犬舎には子犬が9頭(生後45日位)がいました。子犬舎のフェンスの一部が壊れているらしく、いつも3頭の同じ子犬が逃げ出すんだそうです。行った時も,3頭だけめいめい好きな良い場所で寝ていました。あれ? と思うくらい、その3頭は兄弟たちより大人っぽく見えました。

 外は寒いので、ユニットハウスに入り飲んでいたところ、3頭の子犬たちが入れて欲しそうに戸の前に座りだしました。 「よ〜し、入れ、入れ」 と入れてあげると、火を囲んで3頭が好きな位置で火にあたり、そのうちにその人の側に座りました。ずーっと顔を見上げて,触って欲しげな顔をしています。
 「よし、よし」 1頭を触ると、違う子犬が彼の足をそっと手で触って催促をし、気が済むと好きな位置で寝たり、座ってまた顔を見上げたりしていました。子犬同士なのにバタバタ騒ぎ回らず、すごく静か。(外では彼らも普通に遊ぶんですよ。) 何だか遊ぶより、その人の側にいるほうが忙しいみたい。

 大小、トイレに行きたくなると、戸の前に座って顔をじーっと見たり、「ク〜ン」と泣いて戸を開けてもらい、終るとまた戸の前に座って入れてもらう。。。この3頭、自分で頭を使って脱出し、触ってもらっているうちに自然にこうなったんだろうな・・・って思った。 生まれてから50日経っていなくても、ちゃーんと心が出来てた。

 なんかさ、こういうのって犬らしくていいなぁ・・・って思う。
 犬って本当は、こうなんだろうなぁって。

シェップ

 トラックの荷台から飛び降りた時には少々後ろ足にふらつきをみせていたシェップ@11歳は、 "bring'em to me" の号令がかかると、見事なアウトランで藪や岩陰に隠れていた羊を次々と追い出しながら地平線へ消えて行った...と思った次の瞬間には、羊の群れが土煙をあげながらこちらに向かって走ってきます。その後方に豆粒のようなシェップの姿を見止めたときには、なんだか背中がゾクゾクしてしまうほど興奮したよ。
 182匹の羊を2分足らずで集めてきたシェップは、先頭の羊から目を離さず、しかし、石壁に隠れてカメラを構えていた夫の姿に気づいたようで 「怪しいやつがいるよ。どうする?」 と目でちらちらと合図を送ってました。おじさんが頷くと安心して仕事を続行。

 丸くまとまった群れからおじさんが離れると、羊が2、3匹づつおじさんの方へ走っていきます。数を数えるおじさんの対角線上に構えたシェップは、通過する1匹1匹に目を光らせています。選別もこんな風に行われるそうで、おじさんが合図した羊を群れから切り離し、病気や怪我をした羊を見つけると連れてくるんだそうです。

 「コマンドは幾つくらい知ってるの?」
 「Oh, many」
 「何種類くらいの仕事ができるの?」
 「Oh, too many」

 こんな風に、目で会話を交わしながらの仕事は、幅が無限に広がっていくのかな。

 羊って全力で走ると速いんだね〜! おどろいた。
 暴走羊を追いかけるシェップの加速は、若犬みたいにターボエンジンがかかる。並んだ瞬間に「ギロッ」と睨みを利かせて追い抜いていく...

 肩で荒い息をしながら戻ってきたシェップは、桶の水を少し飲んでトラックの荷台に飛び乗り、私たちは次の放牧場へ向かいました。

A君2号 と Bちゃん2号

 あてもなく宿屋を探していました。

 路肩に 「B&B」 の看板を見つけたので、門をくぐって玄関へと続く私道に車を乗り入れました。家の人は不在のようなので、このまま待たせてもらうことにして、家の裏手をのぞいてみると、、、やっぱりいました! 白黒とトライの犬たちが。
 私たちを見ても吼えることなく、受け入れてもらえそうだったので、ちょっと離れたところでしゃがんでみると、くねくねと寄ってきて、デコと背中をすりすりしてくれました。片方を撫でていると、もう一方がわずかな隙間に鼻先を突っ込んできて、ぐいぐいっと割り込んできた。

 「ややや!この芸風って世界共通?」

 おもしろくて、それでも最初の子を撫でつづけていると、今度は後ろから私の膝の間を割るようにしてぐいぐいっ、、、「やれやれ(苦笑しつつうれしい)」 と割り込んできた子と目を合わせると、 「待ってましたぁ」 とばかりにゴロンと寝転び、前脚でちょいちょいと催促です。

 「はいはいはい〜」 と撫でながら立ち上がると、2匹が足のまわりをクルクル回り始めます。そのうちに、黒白の割り込み君がハッキリと自己主張を始めたのですが、トライの女の子が一瞬鼻にシワを寄せたかと思うと白黒の鼻先をかちっ!

 ダンナと大笑いしながら、我が家のA君、Bちゃんを彷彿とさせる彼らに、A君2号、Bちゃん2号と名前をつけさせてもらいました。

 その2匹、突然ハッと構えると、1点をみつめて小さく尾を振り始めました。視線の先、遠くの門のあたりには、こちらに向かってくるトラックが見えました。マスターが帰ってきたんだね。トラックが近づいてくるにつれ、2匹は喜びのくねくね踊りを始めました。

 父と娘、牛追い犬です。
 毎日のお仕事は、畜舎から牛を連れてきて乳搾りの場所へ順番に送り込むお手伝い。それが終わると、放牧地に連れて行きます。しんがりから 「ワンワン」 と吼えたて、時にはかかとや鼻先に 「かぷっ」 としながら、上手に誘導していく牛追い犬の姿は、このあたりでは朝のおなじみの光景で、このために車をストップしてやり過ごしたこともしばしばありました。夕方には、放牧地から集めふたたび畜舎に運ぶお手伝い。

 ご主人の話では、羊追いと牛追いは 「基本的には同じように見えるけど、生まれも仕事のやり方も違うんだよ」 とのことでした(両方こなす子もたくさんいるそうですが)。

 Bちゃん2号(2歳半)は、ただいま父ちゃんについて見習い中です。先輩犬がしっかりしてれば、見て覚えていくんだそうです。2頭のの仕事ぶりを披露してくれた後で、 「羊相手には、もっと繊細さと細かい作業が要求される。興味があるならぜひヒル(丘陵)のあたりへ行ってごらん」 とシェップの宿屋があるあたりの地名を教えてくれました。