Saturday, February 18, 2006

ニーヴ

 夕刻、お世話になった友人宅の庭を散歩していると、塀越しにトライの大柄な子の姿が見えたので、カメラを持ってお隣さんの表玄関に走って行きました。
 門の外からカメラを構えると、スクっと立ち上がり
 「ウー、ワンワンワン!」
 背中の毛を逆立つつ飛びかかるそぶりを見せながらも、徐々に家の方へ後退していきます。
 「あ〜ゴメン! びっくりさせちゃったね」

 撮影をあきらめ退散しようとしたとき、納屋から出てきたティーネイジャーの男の子が厳しい口調で一声.
 "ニーヴ stop it! Come here, lay down"
 ニーヴはほっとした様子で男の子の足元に伏せましたが、後ろから警戒心に満ちた視線を送ってきます。

 「○○の友達だね?」
 「うん。すてきな犬ね、あなたの?」
 「そうだよ。もうすぐ3歳で、、、」
 話はとんとん拍子にまとまり、裏の牧草地でニーヴの仕事を見せてくれることになりました。途中にかなりぬかるんだ個所があり、ためらっていると、その子がひょいっと肩を貸してくれたので、足首まで埋まることなく渡ることができました。

 期待半分、でもまだ納得いかないよ、、、という様子でついてきたニーヴは、それでも、少年の2〜3m後ろを歩く私を追い抜かないように、歩調を緩めたり、くるっとUターンをしながら気をつけて歩いていました。闖入者でもいっぱしの人間として顔を立ててくれているのでしょうか。

 牧草地には数頭の牛と50匹の羊が入り混じり、のんびりと草をはんでいました。 "Bring'em" の号令とともに石塀沿いに走っていくニーヴの姿を見止めると羊たちが集まってきます。牛は、、、そのまま動かずに食べつづけています。

 頃合を見計らって「シュテッ(たぶんsteady)」の号令がかかると、ニーヴは納得がいかない様子で、うろうろしたかと思うと、ばたっと草地に寝転がりごろごろとエビ踊りを始めたのです。厳しい口調で号令が繰り返されると、立ち上がり仕事を再開。

 この一連の不可解な動きの答えは、おそらく、「シュテッ」のかかった位置より向こうの草地からひょっこりと姿を見せた2匹の羊にあったのではないかと思います。

 逆光越しに、その羊たちに向かってクラウチング体勢をとるニーヴの姿は、なんだか闘牛士に向かう牛のように雄々しく見えました。

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